継続的モニタリングと運用 ― 攻撃を「検知・遮断・回復」するゼロトラスト運用術|会社のデータを守る ― 社員が知るべき情報管理の基本 第1回

継続的モニタリングと運用 ― 攻撃を「検知・遮断・回復」するゼロトラスト運用術|会社のデータを守る ― 社員が知るべき情報管理の基本 第1回

この記事はAIが執筆したものを筆者が監修しています。2026年5月7日時点の情報です。

継続的モニタリングと運用
― 攻撃を「検知・遮断・回復」するゼロトラスト運用術

2026年5月号 全4回シリーズ(5月配信)
📘 会社のデータを守る ― 社員が知るべき情報管理の基本
  • 第1回 継続的モニタリングと運用 ― 攻撃を「検知・遮断・回復」するゼロトラスト運用術 今回
  • 第2回 テレワーク・クラウド時代の安全な働き方 ― リモートアクセスとデータ管理の基本 5/13 予定
  • 第3回 サプライチェーン攻撃から組織を守る ― 取引先・外部ツールのリスク管理 5/20 予定
  • 第4回 インシデント初動対応 ― 侵害を受けたとき、社員はまず何をすべきか 5/27 予定

「会社のデータを守る」シリーズ第1回は、すべての対策の前提となる「継続的モニタリング」からスタートします。どれだけ堅牢な防御を築いても、異常を検知できなければ、侵入は静かに広がります。

IPAが公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威の第1位が「ランサム攻撃による被害」(11年連続1位)、続いて「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」「内部不正による情報漏えい等の被害」と、いずれも「侵入後にいかに早く気づけるか」が被害規模を左右する脅威ばかりです(IPA 2026年1月公表)。

2025年、日本国内で公表されたセキュリティインシデントは559件(1日約1.5件)に達しました(トレンドマイクロ、2026年1月更新版)。今号では、規模を問わず実践できる監視体制の構築と、インシデント発生時の対応フローを解説します。

181日
→ 侵害の平均検知所要日数(世界平均)
検知+封じ込めの合計は241日(IBM Cost of a Data Breach Report 2025)
最大50%
脅威検知・対応時間の短縮
Microsoft Defender for Endpoint 導入実績(Microsoft公式)
74%
SIEM+SOAR統合率
SIEMに自動対応(SOAR)を組み合わせるエンタープライズの割合(ZeroThreat.ai "Key Zero Trust Statistics 2026")
559件
2025年国内インシデント公表数(通年)
1日平均1.5件のペース(トレンドマイクロ、2026年1月更新)

第1章:なぜ継続的モニタリングが必要か

ゼロトラストの原則は「常に確認し、決して信頼しない」です。これは単に入口を固めることではなく、ネットワーク内部でも常時監視を続けることを意味します。

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」が示す組織向け脅威の上位は、ランサム攻撃(1位)、サプライチェーン攻撃(2位)、内部不正(3位)、標的型攻撃(4位)と、いずれも「侵入後の潜伏」を前提とする脅威です。境界防御だけでは検知できないため、「侵入されたあと、どれだけ早く気づくか」が現代のセキュリティの主戦場になっています。

⚠️ 侵入してからの"静寂"が最も危険

攻撃者はシステムに侵入した後、すぐに動くわけではありません。IBMの調査では、侵害の検知までに世界平均で181日、封じ込め完了まで含めると241日を要します(IBM Cost of a Data Breach Report 2025)。継続的監視なしでは、その間ずっと「気づけない」状態が続きます。

📊 IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編 ― トップ5
  • 第1位:ランサム攻撃による被害(11年連続1位)
  • 第2位:サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
  • 第3位:内部不正による情報漏えい等の被害
  • 第4位:標的型攻撃による機密情報の窃取
  • 第5位:テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃

上位脅威の多くは「侵入してから時間をかけて潜伏・拡散する」タイプです。だからこそ、入口対策に加えて継続的モニタリングが不可欠になります(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」2026年1月公表)。

なぜ検知が遅れるのか ― 3つの原因

① ログが多すぎて人間が確認できない

構造的問題
中規模企業でも1日数百万行のログが生成されます。手動での確認は現実的でなく、重要なアラートが埋もれてしまいます。自動化ツールなしでは監視は機能しません。

② 境界型セキュリティ前提の設計

設計の限界
「外部をブロックすれば内部は安全」という旧来の発想では、VPN経由や内部からの攻撃(インサイダー脅威・横移動)を見逃します。ゼロトラストでは内部トラフィックも常時監視対象です。

③ アラートへの対応体制がない

運用の問題
ツールを導入しても「誰がアラートを確認し、何をするか」が決まっていない場合、検知しても対応が遅れます。組織規模を問わず、事前の対応手順(プレイブック)の整備が重要です。

第2章:SIEMとSOARの基礎 ― 監視ツール入門

継続的モニタリングの中核となるのが SIEM(Security Information and Event Management)SOAR(Security Orchestration, Automation and Response) です。難しそうに聞こえますが、クラウド型のサービスを活用すれば、規模を問わず導入可能です。

📊 SIEMとSOARの違いをひと言で
  • SIEM:各種ログを集約・分析し、異常なパターンを「検知・通知」するシステム
  • SOAR:検知した脅威に対して「自動対応・封じ込め」を行うシステム
  • 組み合わせ:SIEMで検知 → SOARで自動対応、が現代のスタンダード(エンタープライズの74%が統合運用・ZeroThreat.ai 2026)

主要ツール比較

ツール 特徴 価格帯
Microsoft Sentinel Microsoft 365と深く統合。AIベースの脅威検知。無料枠あり 従量課金(分析層: 約¥730/GB〜、ログ量により大幅変動)/公式サイト参照
Elastic SIEM オープンソースベース。カスタマイズ性高。セルフホスト可 無料〜(クラウド版は有料)
Cloudflare Zero Trust ネットワーク監視+ZTNA。無料プランで50名まで利用可 無料(50ユーザーまで)/Pay-as-you-go: $7/ユーザー/月〜(Cloudflare公式)
MVISION EDR(Trellix) エンドポイント特化。AIで脅威を自動分類・対応提案 個別見積もり(Trellix公式サイトより問い合わせ)
💡 まずはMicrosoft 365のセキュリティ機能を最大活用

すでにMicrosoft 365を使っている場合、Microsoft Defender for Business(Microsoft 365 Business Premium に含まれる)を有効化するだけで、エンドポイント監視・脅威検知・自動対応の基盤が手に入ります。追加コストゼロで始められる最初のステップです(Microsoft Defender for Business 公式)。

第3章:インシデント対応の5ステップ ― 発生から回復まで

監視ツールが異常を検知した後、何をどの順番でやるかを事前に決めておくことが重要です。「インシデント対応プレイブック」と呼ばれるこの手順書は、パニック状態でも迷わず行動するための指針です。

1

検知(Detect)― 異常の発見と初期評価

SIEMアラート・エンドポイント検知・ユーザー報告などで異常を把握。「本物のインシデントか誤検知か」を初期判断し、インシデント対応チームへ即時エスカレーション。
目標時間:検知から15分以内に初期判断完了

2

分析(Analyze)― 範囲と影響の特定

何が侵害されたか(アカウント・端末・データ)、どこから侵入したか(侵入経路)、どこまで広がっているか(横移動の有無)を調査。ログ分析とフォレンジックを並行実施。
外部専門家(MSP/MSSP)への依頼も検討

3

封じ込め(Contain)― 被害の拡大阻止

侵害されたアカウントの無効化、感染端末のネットワーク隔離、疑わしいプロセスの停止。この段階でのスピードが被害規模を左右します。ゼロトラストのマイクロセグメンテーションがここで機能します。

4

回復(Recover)― 業務の正常化

クリーンなバックアップからシステムを復元、パスワードリセット、セキュリティパッチの適用。段階的に業務を再開し、再侵害がないか監視を継続。
ランサムウェアの場合:平均復旧期間は数日〜数週間

5

改善(Improve)― 再発防止と体制強化

インシデントの原因分析(ポストモーテム)、対応手順の見直し、脆弱性の修正、監視ルールの更新。「なぜ防げなかったか」を正直に振り返り、プレイブックに反映することが最重要。

📋 事例:製造業B社のランサムウェア対応(2025年)

製造業B社は、社内にSIEMを導入していなかったため、ランサムウェア感染から気づくまでに3日間かかりました。この間に感染は主要サーバー5台に拡大し、業務停止は2週間に及びました。事後にMicrosoft Sentinel(Defender for Business)を導入し、翌年の別の攻撃試行を15分以内に検知・隔離することに成功しています。

第4章:今すぐ始める3つの監視設定

高度なツールがなくても、今日からできる監視設定があります。以下の3つは、コストをかけずに検知能力を大幅に向上させます。

✅ 設定① Microsoft 365 のサインインログ監視を有効化

Microsoft 365管理センター → セキュリティ → サインインログ。「不審なサインイン」アラートを有効化するだけで、海外IPや未知デバイスからのアクセスを即時通知できます。設定時間:約30分。

✅ 設定② Cloudflare Zero Trust の無料プランを導入

50名まで無料で利用できるCloudflare Zero TrustのDNSフィルタリングを有効化。悪意あるドメインへのアクセスを自動ブロックし、アクセスログも取得できます。フィッシング・マルウェア通信の遮断に即効性があります。

✅ 設定③ インシデント対応連絡先リストの作成

ツール以前の問題として、「異常を発見したら誰に連絡するか」を明文化します。社内IT担当 → 経営者 → 外部MSP → 警察庁サイバー犯罪相談窓口、の連絡フローを1枚の紙にまとめ、全員に共有してください。

実践チェックリスト ― 継続的モニタリング編

🔍 監視・検知の整備
  • Microsoft 365 / Google Workspace のサインインアラートを有効化している
  • エンドポイント(PC・スマホ)にEDRまたはアンチウイルスを導入している
  • ファイアウォール・ルーターのログを定期確認している
  • 不審なログインや異常なデータ転送を通知するアラート設定がある
🚨 インシデント対応準備
  • インシデント対応プレイブック(手順書)を作成・共有している
  • 連絡先リスト(社内担当・外部MSP・警察相談窓口)を整備している
  • 重要データのバックアップを取得し、オフライン/オフサイト保管している
  • バックアップからの復元テストを年1回以上実施している
🔄 継続的改善
  • セキュリティインシデント後にポストモーテム(振り返り)を実施している
  • OS・ソフトウェアのセキュリティパッチを1週間以内に適用している
  • 年1回以上、セキュリティ設定の棚卸しと見直しを行っている
  • 社員向けセキュリティ訓練(フィッシング模擬訓練等)を実施している

第1回のまとめ:継続的監視がゼロトラストの「要」

今回は「継続的モニタリングと運用」をテーマに、検知から回復まで5ステップでゼロトラストの運用実務をご紹介しました。

📌 第1回 今回のポイント整理
  • 2026年の脅威環境:IPA「10大脅威 2026」組織編は、ランサム攻撃が11年連続1位。サプライチェーン攻撃・内部不正と続き、いずれも侵入後の潜伏が前提
  • なぜ監視が必要か:侵害検知まで世界平均181日・封じ込め完了まで241日かかる(IBM Cost of a Data Breach Report 2025)
  • SIEMとSOAR:検知(SIEM)と自動対応(SOAR)を組み合わせるのが現代標準。エンタープライズの74%が統合運用(ZeroThreat.ai 2026)
  • 5ステップ対応:検知 → 分析 → 封じ込め → 回復 → 改善。プレイブックを事前に整備する
  • 今日からできる3設定:M365サインインアラート / Cloudflare ZT 無料プラン / 緊急連絡先リスト

ゼロトラストは一度導入して完了するものではありません。脅威は常に進化し、組織も変化します。「常に確認し続ける文化」を育てることが、真のセキュリティ強化につながります。

▶ NEXT ISSUE — 5月13日配信予定

第2回:テレワーク・クラウド時代の安全な働き方

IPA「10大脅威 2026」組織編 第5位「テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃」に対応。
リモートアクセスの落とし穴、クラウドストレージの適切な共有設定、VPNとゼロトラストの使い分けを解説します。

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