AI詐欺(ディープフェイク詐欺)の最新動向と企業が取るべき対策
【要約版】
前々回お伝えした通り、AI詐欺は既に「経営リスク」となっています。
今回は、具体的な実装方法と最新の防御テクノロジーについてお伝えします。
おさらい:なぜ今、AI詐欺対策が急務なのか
• わずか10秒の音声から声を複製可能
• 香港では38億円、日本でも山形鉄道が1億円の被害
• 2023年に日本で確認されたディープフェイクは前年比28倍
今回の焦点:「対策を知っている」から「対策を実装している」へ
企業規模別の実装ポイント:
【小規模企業(従業員50名以下)】
• シンプルな二段階確認ルールの徹底
• 無料ツールを活用した基本的な防御
• 月1回5分の社内共有で十分
【中規模企業(従業員50-300名)】
• ワークフロー管理システムへの組み込み
• 部門横断的な訓練プログラム
• インシデント対応フローの整備
【大企業(従業員300名以上)】
• AI検知ツールの導入検討
• 専門チーム(CSIRT)の設置
• サプライチェーン全体への対策展開
最新技術動向:防御側も進化している
ディープフェイク検知技術:
• AI音声・映像の高精度識別が可能に
• リアルタイム検知システムの実用化
• 電子透かし・C2PA(Content Provenance and Authenticity)技術
参考:
• 国立情報学研究所 - ディープフェイク検知技術の社会実装に向けて
• 富士通など9団体 - 世界初の偽情報対策コンソーシアム設立(2024年10月)
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【詳細版】
■ 前々回メルマガからのアップデート
前々回(特殊詐欺597.3億円、ネットバンキング不正42.2億円)から、
さらに状況は深刻化しています。
2025年9月末時点の最新データ(警察庁発表):
• SNS型投資詐欺:認知件数5,942件、被害額773億円(前年同期比+70億円)
• 7~9月で急増傾向が顕著に
参考: 警察庁 - 令和7年9月末における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等
■ 企業規模別:実装可能な具体的対策
前々回は「振込の2名承認」「請求書照合」「社内教育」をお伝えしましたが、
今回は「どうやって実装するか」を企業規模別に解説します。
【小規模企業向け】予算ゼロでも始められる対策
Step 1: 社内ルールの文書化(所要時間:1時間)
【AI詐欺対策ルール(例)】
1. 電話での振込指示は一切受け付けない
2. メール指示も、送信元ドメインを必ず確認
3. 10万円以上の送金は2名確認必須
4. 新規取引先への送金は社長承認必須
5. 「急ぎ」「秘密」「今すぐ」は詐欺の可能性大
Step 2: 無料ツールの活用
• Google Workspace / Microsoft 365の標準機能
二要素認証(MFA)の全社導入
外部メール警告の設定
送信ドメイン認証(DMARC/SPF/DKIM)の確認
・無料のディープフェイク検知ツール
Deepware Scanner - 動画のディープフェイク検知
Sensity AI - 画像・動画の真贋判定
Step 3: 月1回5分の社内共有(Slackやメールで十分)
毎月1つずつ、最新の詐欺手口を共有:
【今月のAI詐欺アラート】
手口:社長の声をAIで複製し、経理に「急ぎの振込」を指示
対策:電話での振込指示は一切受けない。必ずメール+承認フロー
【中規模企業向け】ワークフローへの組み込み
既存システムへの統合例:
1. 会計システム / ワークフローシステムへの二段階承認追加
• freee、マネーフォワード、楽楽精算等に承認フロー追加
• 10万円以上は自動的に2名承認が必要に設定
2. ビジネスチャットでの確認フロー整備
• Slack / Microsoft Teams に「送金確認チャンネル」を設置
• 振込前に必ずチャンネルで報告→承認→実行
3. 四半期に1回の訓練プログラム実施
• 実際にディープフェイク音声を聞かせる訓練
• 疑似的な詐欺メールを送信し、どれだけ見抜けるかテスト
訓練用リソース:
• KnowBe4 - セキュリティ意識向上トレーニング(一部無料)
• IPA - 情報セキュリティ10大脅威
【大企業向け】本格的な技術導入と組織体制
1. AI検知ツールの導入
ツール名:
・Microsoft Defender for Office 365(メール・添付ファイルのAI分析)
・Darktrace(ネットワーク全体のAI監視)
・Resemble AI Detect(音声のディープフェイク検知)
・C2PA対応ツール(コンテンツ来歴情報確認)
参考:
• Resemble AI - 音声クローン検知技術
• C2PA(Content Provenance and Authenticity)
2. CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置
最低限の体制:
• 責任者:情報システム部門長または経営企画室長
• 実務担当:IT担当者1名 + 総務/経理から各1名
• 外部パートナー:セキュリティ専門企業との契約
3. サプライチェーン全体への対策展開
取引先にも対策を要請:
【お取引先各位】
当社では、AI詐欺対策として以下を実施しております。
お取引先様におかれましても、ご協力をお願いいたします。
1. 請求書メールには必ず電子署名を付与してください
2. 振込先変更の際は、必ず書面での通知をお願いします
3. 電話での振込依頼は一切受け付けておりません
■ 最新防御技術:企業が知っておくべきトレンド
1. ディープフェイク検知AIの進化
国立情報学研究所の取り組み:
• 生成AI技術の悪用検知システムの開発
• ディープフェイク検知技術の社会実装プロジェクト
• 産学連携での技術開発が加速中
参考: 国立情報学研究所 - ディープフェイク検知技術の社会実装に向けて
2. コンテンツ認証技術(C2PA)
C2PAとは:
• 画像・動画・音声に「来歴情報」を埋め込む国際標準規格
• Adobe、Microsoft、Google、BBC等が参加
• 誰が、いつ、どこで、どのように作成したかを証明
企業での活用例:
• 公式発表動画にC2PA情報を付与
• 社長のメッセージ動画の真贋を証明
• プレスリリース画像の改ざん防止
参考: Adobe - Content Authenticity Initiative
3. 音声認証技術の高度化
声紋認証 + 行動特性分析:
• 声の特徴だけでなく、話し方の癖やリズムも分析
• リアルタイムでの「生体検証」が可能に
• ディープフェイク音声との判別精度が向上
参考: Pindrop - Voice Intelligence Platform
■ 実装チェックリスト:今月中にやるべきこと
【全企業共通】今月中に実施すべき5つ(所要時間:合計約2時間20分)
□ 1. 電話での振込指示禁止ルールを文書化 [最優先]
所要時間:30分 | 担当:総務/経理責任者
□ 2. メール送信元ドメインの確認手順を明文化 [最優先]
所要時間:15分 | 担当:総務/IT担当
□ 3. 10万円以上の送金に二段階承認を導入 [高優先]
所要時間:1時間 | 担当:経理責任者+IT担当
□ 4. 全社員に「AI詐欺の最新手口」を5分で共有 [高優先]
所要時間:5分 | 担当:総務/セキュリティ担当
□ 5. 緊急連絡先(社長・役員)の「本物の確認方法」を決定 [中優先]
所要時間:30分 | 担当:総務責任者
________________________________________
【IT担当者がいる企業】追加で実施(所要時間:合計約4時間)
□ 6. 二要素認証(MFA)の全社導入 [最優先]
所要時間:2時間 | 担当:IT担当
□ 7. メールセキュリティ設定の見直し(SPF/DKIM/DMARC) [高優先]
所要時間:1時間 | 担当:IT担当
□ 8. 無料のディープフェイク検知ツールを試用 [中優先]
所要時間:30分 | 担当:IT担当
□ 9. 四半期訓練プログラムのスケジュール策定 [中優先]
所要時間:30分 | 担当:総務+IT担当
□ 10. インシデント発生時の連絡フロー作成 [高優先]
所要時間:1時間 | 担当:総務責任者+IT担当
________________________________________
【大企業・上場企業】追加で実施(所要時間:合計約8時間)
□ 11. CSIRT体制の構築または見直し [最優先]
所要時間:3時間 | 担当:情報システム部門長
□ 12. AI検知ツール導入の予算確保と選定 [高優先]
所要時間:2時間 | 担当:情報システム部門+経営企画
□ 13. サプライチェーン全体への対策要請 [高優先]
所要時間:1時間 | 担当:調達部門+総務
□ 14. 取締役会への報告(四半期ごと) [中優先]
所要時間:1時間(報告資料作成) | 担当:情報システム部門長
□ 15. サイバー保険の補償範囲確認(AI詐欺対応) [中優先]
所要時間:1時間 | 担当:総務+財務
■ よくある質問(FAQ)
Q1: 小規模企業でも本当に狙われるのですか?
A: はい。むしろ中小企業の方が狙われやすい傾向にあります。
• セキュリティ対策が手薄
• 社長との距離が近く、電話指示が日常的
• 経理担当が少人数で確認体制が弱い
Q2: 無料ツールだけで本当に防げますか?
A: 完璧ではありませんが、大幅にリスクを減らせます。 最も重要なのは「ルール」と「社員の意識」です。
• 二段階確認ルールの徹底:コストゼロ
• メール送信元確認の習慣化:コストゼロ
• 月1回5分の情報共有:コストゼロ
Q3: すでに被害に遭ってしまった場合はどうすればいいですか?
A: 以下の手順で即座に対応してください。
1. 即座に振込停止:金融機関に連絡(24時間以内が勝負)
2. 警察に被害届:最寄りの警察署のサイバー犯罪相談窓口
3. 証拠保全:メール、通話記録、チャット履歴をすべて保存
4. 専門家に相談:弁護士、セキュリティ専門企業
参考:
• 警察庁サイバー犯罪相談窓口
• IPA - 情報セキュリティ安心相談窓口
Q4: 社員教育はどのくらいの頻度で実施すべきですか?
A: 最低でも以下の頻度を推奨します。
• 月1回5分:最新の詐欺手口の共有(メール/Slackで十分)
• 四半期に1回30分:訓練プログラム(疑似詐欺メール送信等)
• 年1回1時間:全社員向けセキュリティ研修
■ まとめ:「知っている」から「実装している」へ
前々回のメルマガで、AI詐欺の深刻さはお伝えしました。
今回お伝えしたいのは、
「対策を知っている」だけでは被害は防げない。
「対策を実装している」企業だけが守られる。
ということです。
今月中にやるべき最優先3つ:
1. 電話での振込指示禁止ルールを文書化(所要時間:30分)
2. メール送信元の確認手順を全社共有(所要時間:15分)
3. 「AI詐欺の最新手口」を5分で社内共有(所要時間:5分)
対策を実装すると得られる3つのメリット:
1. 金銭的損失の防止
数百万~数億円の被害を未然に防止
2. 企業の信用維持
取引先・顧客からの信頼を守る
3. 社員の安心感向上
「会社が守ってくれている」という安心感がモチベーション向上に
サイバーレジリエンスでは、 企業規模に応じた実装支援を行っています。
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※2025年11月26日時点の情報です。最新情報は公式サイトで確認してください。
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